相続登記の義務化に伴い、令和6年から新たに始まった制度が
**「相続人申告登記」**です。
最近では、
「とりあえずこれを出せば大丈夫?」
「正式な相続登記の代わりになりますか?」
といったご相談が増えています。
相続人申告登記は便利な制度ではありますが、
使い方を誤ると、後の手続きでかえって負担が大きくなることもあります。
今回は、利用が向くケースと注意点を実務的な視点で整理します。
相続人申告登記は、相続登記の義務化に対応するために設けられた制度で、
不動産の名義変更までは行わず、
「自分が相続人である」
という旨を法務局に申出する手続きです。
これにより、一定の場合には相続登記義務違反(過料)の対象を回避できるとされています。
実務上、次のような場合には相続人申告登記の活用が検討されます。
相続人間で話し合いがまとまらず、すぐに正式な相続登記ができないケースです。
相続人が多数いる
感情的対立がある
財産評価で意見が割れている
このような場合、まず申告登記を行い、義務違反のリスクを回避しつつ、
協議の進展を待つという使い方があります。
例えば、
戸籍収集に時間を要する
相続人の所在調査が必要
数次相続が発生している
といったケースでは、正式登記までに相当の期間を要することがあります。
このような場合の時間的猶予の確保として活用されることがあります。
売却や担保設定の予定が直近にない場合、
暫定的な整理として申告登記を選択する判断もあり得ます。
一方で、次のような場合は、相続人申告登記だけで済ませることに注意が必要です。
相続人申告登記は、名義変更そのものではありません。
そのため、売却時には結局、正式な相続登記が必要になります。
売却予定が明確な場合は、最初から本登記を検討した方が、
結果として手続きがスムーズになることも多いです。
例えば、
共有関係を整理したい
特定の相続人へ取得させたい
将来の紛争予防を重視したい
といった場合、申告登記はあくまで暫定措置にとどまります。
根本的な解決には、遺産分割に基づく正式な相続登記が必要です。
相続人が少なく、協議も可能な状況であれば、
あえて申告登記を経由せず、最初から本登記を行う方が合理的な場合もあります。
ご相談の中で、特に多い誤解が次の点です。
「相続人申告登記をすれば、名義変更は終わり」
これは正確ではありません。
相続人申告登記は、
義務違反の回避措置
暫定的な対処
という位置づけであり、
最終的な名義整理は別途必要になる点に注意が必要です。
相続人申告登記を使うかどうかは、
相続人の状況
不動産の利用予定
協議の見通し
相続関係の複雑さ
などを総合的に見て判断する必要があります。
一律に「まず申告登記」というものではなく、
事案ごとの見極めが重要です。
当事務所では、
相続人申告登記の適否判断
戸籍調査・相続関係の整理
遺産分割協議書作成支援
正式な相続登記への移行サポート
など、状況に応じたご提案を行っております。
「申告登記を使うべきか迷っている」
という段階でも、お気軽にご相談ください。
相続人申告登記は、義務化後の実務で有用な制度ですが、
あくまで暫定的な位置づけの手続きです。
利用が適した場面と、そうでない場面を見極めることが、
将来の手続き負担を軽減するポイントになります。
不動産の相続でお悩みの際は、どうぞお気軽に当事務所までお問い合わせください。